こんにちは。
技術士第一次試験のもう少しで願書配布が始まりますね。
第一次試験、第二次試験ともに20の技術部門で試験が実施されます。(第一次試験は総監がなし。第二次は総監を併せて21部門)
受験者の中には技術士になるための第二次試験を目標としていて、第二次試験はあくまでそのために受験する、という方もいらっしゃるでしょう。そういった方にとっては第一次試験は合格しやすい部門で受験したい、ということがあるかもしれません。
また普段の業務が複数の部門にまたがっている場合、どの技術部門で受験すべきかについて迷ったりしますね。
今回は技術部門別の合格率について調べてみました。
目次
技術部門
技術士試験では21の技術部門に分かれています。
技術部門は20の専門部門(総合技術管理部門以外の技術部門)と総合技術管理部門(総監)の合計21の部門となっています。
総監については第一次試験では当面の間は試験を実施しないということになっており、第一次試験は実質的には20の技術部門で受験することになります。
部門番号 | 技術部門 |
---|---|
01 | 機械部門 |
02 | 船舶・海洋部門 |
03 | 航空・宇宙部門 |
04 | 電気電子部門 |
05 | 化学部門 |
06 | 繊維部門 |
07 | 金属部門 |
08 | 資源工学部門 |
09 | 建設部門 |
10 | 上下水道部門 |
11 | 衛生工学部門 |
12 | 農業部門 |
13 | 森林部門 |
14 | 水産部門 |
15 | 経営工学部門 |
16 | 情報工学部門 |
17 | 応用理学部門 |
18 | 生物工学部門 |
19 | 環境部門 |
20 | 原子力・放射線部門 |
一次、二次の両方を受験する方の多くは一次、二次ともに同じ技術部門を選ばれるでしょう。
ただし自分の専門が複数の技術部門にまたがっている場合や、将来を見越して一次試験を早めに突破しておきたい、という方にとっては一次試験をどの技術部門で受けようか、と悩まれると思います。
技術士 第二次試験では第一次試験で合格した技術部門にかかわらず受験することができます。
その為、第一次試験ではできるだけ合格しやすい技術部門で受験することになります。
第一次試験の技術部門別の合格率は日本技術士会から公開されている情報ですので確認してみましょう。
部門番号 | 技術部門 | 受験申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 受験者に対する合格率 |
---|---|---|---|---|---|
01 | 機械部門 | 2,748 | 2,205 | 1,228 | 55.7% |
02 | 船舶・海洋部門 | 26 | 21 | 11 | 52.4% |
03 | 航空・宇宙部門 | 84 | 67 | 45 | 67.2% |
04 | 電気電子部門 | 2,701 | 2,130 | 1,026 | 48.2% |
05 | 化学部門 | 332 | 281 | 186 | 66.2% |
06 | 繊維部門 | 74 | 58 | 38 | 65.5% |
07 | 金属部門 | 162 | 129 | 74 | 57.4% |
08 | 資源工学部門 | 19 | 17 | 9 | 52.9% |
09 | 建設部門 | 9,729 | 7,414 | 3,194 | 43.1% |
10 | 上下水道部門 | 1,393 | 1,118 | 499 | 44.6% |
11 | 衛生工学部門 | 506 | 368 | 177 | 48.1% |
12 | 農業部門 | 744 | 631 | 388 | 61.5% |
13 | 森林部門 | 341 | 269 | 132 | 49.1% |
14 | 水産部門 | 74 | 60 | 25 | 41.7% |
15 | 経営工学部門 | 325 | 271 | 171 | 63.1% |
16 | 情報工学部門 | 1,000 | 815 | 501 | 61.5% |
17 | 応用理学部門 | 430 | 348 | 182 | 52.3% |
18 | 生物工学部門 | 261 | 209 | 135 | 64.6% |
19 | 環境部門 | 1,245 | 1,009 | 479 | 47.5% |
20 | 原子力・放射線部門 | 177 | 141 | 100 | 70.9% |
計 | 22,371 | 17,561 | 8,600 | 49.0 |
※平成28年度 第一次試験
一覧を見ると「原子力・放射線部門」の70.9%が最も合格率が高いですね。逆に最も合格率の低い「水産部門」に比べると30%もの開きがあります。
水産を専門の業務にしている受験者からしてみると、「原子力・放射線はそんなに簡単なのか!」とちょっと悲観してしまいそうですね。(笑)
ですが他の部門を羨んでいても合格できませんので、「自分は難しい部門で合格するんだ」と割り切って前向き考えることが必要です。
また「原子力・放射線部門」に限らず、船舶・海洋、航空・宇宙、繊維や金属、水産などは受験者数がそもそも低いため合格率に年度ごとのバラツキが出やすいでしょうから、あまり素直に信頼できる情報とは言い難いですね。
逆に受験者数がある程度以上いる機械(約2,700人)、電気電子(約2,700人)、建設(約9、700人)、上下水道(約1,300人)、情報工学(1,000人)、環境(約1,200人)のデータは参考になりますね。
この中でみると情報工学の61.5%という数字はかなり高いと言えるでしょう。
では合格しやすい科目はどれが良いのでしょうか?
受験者数が多くて問題数が安定している科目
先ほどは受験者数と合格率についてを確認しました。
原子力・放射線部門の合格率が高いということでしたが、専門性が高く受験者数もそもそも低いため合格率に信頼度が持てないかもしれない、ということでした。
受験者数がある程度いる部門の中では情報工学部門が合格率が高いということでした。
この理由について推測してみました。
- 情報工学という分野が比較的新しいため、受験者の年齢層が若く、基礎科目を突破しやすい
- 情報工学の中では情報方処理技術者試験という試験があり、試験問題慣れしている
という理由を考えました。
大学などで設置されている理系学部を考えると、1980年代〜1990年代は「電気・電子」が多かったように感じます。
2000年代〜2010年ごろまではそれらの志望者が「情報工学」に移っているように感じています。
その為「情報工学」での受験者は比較的若く、第一次試験で課される基礎科目、大学の授業などで教えられる教養科目に近いのではないか、と推測しています。
また情報工学部門に近い試験としては情報処理技術者試験がありますので、そちらを受験する機会も多いでしょう。
技術士に限らず、どうしても試験問題となると現場レベルで必要とされる知識、経験よりもアカデミックな問題が問われることが多いと思います。
そういった中で情報処理技術者試験については年に二回、かつ様々なレベルで出題されているために受験者が試験問題に慣れているのではないか、と推測しました。
ちなみに他の資格試験との重複、という面で考えると機械や電気電子の試験とえば電気主任技術者や施工管理技士、建設部門ですと一級、二級建築士などの受験者と重なる部分が多いかなと思います。
しかしながらそれらの仕事に従事している技術者と受験者の比率で考えるとそれほど高くないのではないか、と感じています。
また建設部門は技術士試験の中で圧倒的に受験者が多いです。これは建設業の経営審査として公共事業などを受注する際、技術士を一定数以上確保したいので取得を推奨している、という側面があるようです。(ただし建設部門を受験される方の多くは建築系より土木系が多く、受験者の性質は違うかなと思います。)
そのため建設部門は受験対策本も多いため受験しやすい環境が整っている、と言えるでしょう。
受験者の少ない部門はそもそも解説本の取扱が少ないため、自分にあった書籍を選ぶことができなかったりします。
ですので建設、電気電子、機械などは受験しやすいといえるでしょう。
環境部門
ところで「第一次試験は環境部門が受験しやすい」と言われていたりします。
理由としては
- 暗記系の項目が多く、過去問題からの流用も多い
- 経験が無くてもある程度理解しやすい問題が多い
- 合格対策書籍がある程度揃っている
ということが挙げられます。
ただ「経験が無くてもある程度理解しやすい」とはいえ、化学的な基礎知識が必要とされる問題ではありますので、高校で習った化学などを思い出しながらの対策は必要でしょう。
例えば平成28年度の問題では次のような問題が出題されています。
ある程度は元素の名前などを覚えていないと解くことは難しいでしょう。
対策書籍もAmazonで幾つか揃っているようですね。
書籍のラインナップが少ない部門に比べればかなり受験しやすい技術部門と言えそうです。
自分の得意な技術部門を確認する
第一次試験では第二次試験のように必要となる業務経歴が受験資格としてありません。
ですのでどの技術部門で受験しても大丈夫です。
以上は合格率を軸に合格のしやすさを見ましたが、受験者自身の得意部門についてはもちろん考える必要があります。
大学の専攻が水産であれば原子力で受験するより水産で受験したほうが合格しやすいでしょう。
ただ「レアな技術部門で技術士補になりたい!」といった理由で技術部門を選ぶというのも悪くないかな、と思います。(笑)
「技術士(補)」自体は有名な名称ですが、例えば資源工学部門は合格者数が9人しかいません。(平成28年 第一次)
ということは資源工学で合格すれば「日本で9人しか合格しなかった28年度の資源工学部門の技術士補」になれるわけです。
資格ゲッターとしてはそういう情報がモチベーションアップに繋がるかもしれませんね。
まとめ
以上が技術士第一次試験の部門別の合格率などの統計情報について調べてみました。
まずは合格率について調べましたが、実際に一次試験の合格のみを考えるのであれば、受験者数が多い、専門の内容が理解しやすい、ということも考える必要がありそうです。
ただし受験者自身の得意な科目、ということを選ぶことが重要でもありますので、総合的に技術部門を選ぶと良いでしょう。